2.千住

【芭蕉自筆影印】
 弥生も末の七日 元禄二と世尓や 明本のゝ空 龍ゝ登して 月ハ有あ気尓て 光おさま礼る物から 富士の峯可春可尓見へて 上野谷中の花の梢 又いつ可ハと心本そし
(弥生も末の七日、元禄二とせにや、明ぼのゝ空、龍ゝとして、月は有あけにて、光おさまれる物から、富士の峯かすかに見へて、上野谷中の花の梢、又いつかはと心ぼそし。) 

 むつましき可きり盤 宵よ利つとひて 舟尓乗りて送る 千志ゆ登云處尓て 舟越あ可禮者 前途三千里のおもひ胸尓婦さ可利て 幻の知万多に 離別の涙をそゝ具
(むつましきかぎりは、宵よりつどひて、舟に乗りて送る。千じゆと云処にて、舟をあがれば、前途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻のちまたに、離別の涙をそゝぐ。)


 行春や鳥啼魚の目ハ泪
(行春や鳥啼魚の目は泪)

 これを矢立の初登して 行道猶春ゝま寸 人々盤途中爾立ならひて 後可けの見ゆるまてハと 見送るなるへし
(これを矢立の初として、行道猶すゝまず。人々は途中に立ならびて、後かげの見ゆるまではと、見送るなるべし。)


【句碑】
①千住素盞雄(スサノオ)神社
 荒川区南千住6-60-1

 
 行者流や鳥啼魚能目ハ奈美多
(行はるや鳥啼魚の目はなみた)
 (行春や鳥啼魚の目は泪)


②長福寺安養院
 足立区千住5ー17ー9

 ゆく春や鳥奈幾魚の目ハ泪
(ゆく春や鳥なき魚の目は泪)
(以降の解読は上記①参照)



③千住宿歴史プチテラス
 足立区千住河原町21−11

 鮎の子のしら魚送る別哉




【芭蕉像】
 足立区立中央図書館

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