16.医王寺

【芭蕉自筆影印】
 月の輪乃渡しを越て 瀬の上と云宿二出ッ 佐藤庄司可旧跡盤 ひ多りの山際 一里半計尓有 飯塚の里 鯖野と聞て 尋ゝ行に 丸山と云耳尋あ多類 是庄司可旧館也 麓尓 大手の跡なと 人のをしゆる尓ま可せて 泪を落シ 又可多ハら能古寺尓 一家の石碑を残ス 中尓も 二人の嫁可志るし 先あ者連な利 をんなゝ禮共 可ひゝゝ敷(甲斐甲斐しき)名能 世尓聞へつる无の哉登 袂をぬらしぬ 墜涙(ダルイ中国)の石碑も遠きにあらす 寺尓入て ちやを乞へハ 爰尓義経の太刀 弁慶可笈をとゝめて 什物(宝物)とす
(月の輪の渡しを越て、瀬の上と云宿に出づ。佐藤庄司が旧跡は、ひだりの山際、一里半計に有。飯塚の里、鯖野と聞て、尋ゝ行に、丸山と云に尋あたる。是庄司が旧館也。麓に、大手の跡など、人のをしゆるにまかせて、泪を落し、又かたはらの古寺に、一家の石碑を残す。中にも、二人の嫁がしるし、先あはれなり。をんなゝれ共、かひゞゝ敷(甲斐甲斐しき)名の、世に聞へつるもの哉と、袂をぬらしぬ。墜涙(ダルイ中国)の石碑も遠きにあらず。寺に入て、ちやを乞へば、爰に義経の太刀、弁慶が笈をとゞめて、什物(宝物)とす )

 弁慶可笈をも可さ禮帋幟
(弁慶が笈をもかざれ紙幟) 


【句碑】
①詠地付近になし

 (弁慶が笈をもかざれ紙幟 初案 大垣記念館)


②医王寺
 福島市飯坂町平野字寺前45
 本堂左

 笈も太刀もさつき尓かさ禮紙のほ里
(笈も太刀もさつきにかざれ紙のぼり)
(笈も太刀も五月にかざれ紙幟 大垣記念館・素龍本)(芭蕉自筆本になし)




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