桑折〜国見峠〜斉川宿〜白石(泊)
【芭蕉自筆影印】
五月朔日能事也 其夜 飯塚二とま流 出湯あ禮者 湯尓入て 宿を可流尓 土坐尓筵(ムシロ)を敷て あやしき貧家也 ともし火もな氣禮者 ゆるり(ゐろり)の火可け尓 寐所をまう希て婦春 夜尓入て 雷鳴 雨志きりに降て 婦し堂る上に 雨毛里て 蚤蚊尓せゝら(さゝ)連て眠ら春 持病さへおこ里て 消入(キエイル気絶)計尓なん 短夜の空も や宇ゝゝ明連者 又旅立ぬ 猶よる能名残 心すゝます 馬可里て 桒折の驛尓出る 者る可な流行末を可ゝえて 可ゝる病 覚束那しといへと 羈旅(キリョ)邊土(ヘンド)能行脚 捨身 無常乃観念 道路尓志(死)なん これ天の命な利登 氣力聊(イササカ)とり直し 道縦横尓蹈て 伊達の大木戸越こ春
(五月朔日の事也。其夜、飯塚にとまる。出湯あれば、湯に入て、宿をかるに、土坐に筵(ムシロ)を敷て、あやしき貧家也。ともし火もなければ、ゆるり(いろり)の火かげに、寝所をまうけてふす。夜に入て、雷鳴、雨しきりに降て、ふしたる上に、雨もりて、蚤蚊にせゝら(さゝ)れて眠らず。持病さへおこりて、消入(気絶)計になん。短夜の空も、やうゝゝ明れば、又旅立ぬ。猶よるの名残、心すゝまず。馬かりて、桑折の駅に出る。はるかなる行末をかゝえて、かゝる病、覚束(オボツカ)なしといへど、羈旅(キリョ)邊土(ヘンド)の行脚、捨身、無常の観念、道路にし(死)なん、これ天の命なりと、氣力聊(イササカ)とり直し、道縦横に踏て、伊達の大木戸をこす。)
五月朔日能事也 其夜 飯塚二とま流 出湯あ禮者 湯尓入て 宿を可流尓 土坐尓筵(ムシロ)を敷て あやしき貧家也 ともし火もな氣禮者 ゆるり(ゐろり)の火可け尓 寐所をまう希て婦春 夜尓入て 雷鳴 雨志きりに降て 婦し堂る上に 雨毛里て 蚤蚊尓せゝら(さゝ)連て眠ら春 持病さへおこ里て 消入(キエイル気絶)計尓なん 短夜の空も や宇ゝゝ明連者 又旅立ぬ 猶よる能名残 心すゝます 馬可里て 桒折の驛尓出る 者る可な流行末を可ゝえて 可ゝる病 覚束那しといへと 羈旅(キリョ)邊土(ヘンド)能行脚 捨身 無常乃観念 道路尓志(死)なん これ天の命な利登 氣力聊(イササカ)とり直し 道縦横尓蹈て 伊達の大木戸越こ春
(五月朔日の事也。其夜、飯塚にとまる。出湯あれば、湯に入て、宿をかるに、土坐に筵(ムシロ)を敷て、あやしき貧家也。ともし火もなければ、ゆるり(いろり)の火かげに、寝所をまうけてふす。夜に入て、雷鳴、雨しきりに降て、ふしたる上に、雨もりて、蚤蚊にせゝら(さゝ)れて眠らず。持病さへおこりて、消入(気絶)計になん。短夜の空も、やうゝゝ明れば、又旅立ぬ。猶よるの名残、心すゝまず。馬かりて、桑折の駅に出る。はるかなる行末をかゝえて、かゝる病、覚束(オボツカ)なしといへど、羈旅(キリョ)邊土(ヘンド)の行脚、捨身、無常の観念、道路にし(死)なん、これ天の命なりと、氣力聊(イササカ)とり直し、道縦横に踏て、伊達の大木戸をこす。)