20.仙台・宮城野

【芭蕉自筆影印】
 名取川を者多川て 仙臺尓入 あやめふく日也(?) 旅宿を无と免て 四五日逗留ス 爰耳畫工加右衛(?)門と云ものあ利 聊(イササカ)心あるもの登聞て 知る人尓な流 このもの 年比さ多可ならぬ名ところヲ考置(?)侍禮者とて 一日案内ス 宮城野乃萩茂りあひて 秋の氣しきお无ひやらる 玉田 よこ野 つゝし可お可盤 あせひ咲比也(?) 日可氣もゝらぬ松の林耳入て 爰を木の下と云とそ む可しも可く露婦可氣連ハこ楚 ミさ婦らひミ可さ(御笠)とハよみ多礼 薬師堂 天神の御社な登 お可みて 其日盤く禮ぬ
(名取川をわたつて、仙台に入。あやめふく日也(?)。旅宿をもとめて、四五日逗留す。爰に画工加右衛(?)門と云ものあり。聊(イササカ)心あるものと聞て、知る人になる。このもの、年比さだかならぬ名どころを考置(?)侍ればとて、一日案内す。宮城野の萩茂りあひて、秋のけしきおもひやらる。玉田、よこ野。つゝじがおかは、あせび咲比也。日かげももらぬ松の林に入て、爰を木の下と云とぞ。むかしもかく露ふかければこそ、みさぶらひみかさ(御笠)とはよみたれ。薬師堂、天神の御社など、おがみて、其日はくれぬ。)
 猶松嶋 塩かま能所ゝ 畫尓可きて送る 且(カツ) 紺の染緒つ氣多る草鞋二束 者なむ氣春 され者こ楚 風流の志連もの 爰耳至りて其實をあら者春
(猶松嶋、塩かまの所ゝ、画にかきて贈る。且(カツ)、紺の染緒つけたる草鞋二束、はなむけす。さればこそ、風流のしれもの、爰に至りて其実をあらはす。)

 あや免草足尓結ん草履の緒
(あやめ草足に結ん草履の緒)

 彼畫圖尓ま可せて たとり行者 おくの細道の山際尓 十苻の菅有 今も年々十苻の菅菰(コモ)を調て(編て) 国守尓献スと云り

(彼画図にまかせて、たどり行ば、おくの細道の山際に、十苻の菅有。今も年々十苻の菅菰(コモ)を調て(編で)、国守に献ずと云り。)

 

【句碑】
①陸奥国分寺薬師堂
 仙台市若林区木ノ下3-8-1

 安や免草足尓結ん屮鞋能緒
(あやめ草足に結ん草鞋の緒)

【難解文字(?)】
 畫工加右衛(?)門

  参考文字
   左右


   右衛門


 咲比也(?)
  
  参考文字




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