23.塩釜

【芭蕉自筆影印】
 五月雨能空聊(イササカ)者禮て 夕月夜可す可に 籬可嶋も程ち可し あま能小舟こきつ連て 肴(魚)王か川(分ける)こゑゝゝ尓 綱手(引き網)可なしも(と)よみ遣舞哥の古ゝろも志ら禮て いとゝ(いっそう)あ者禮也 其夜目盲法師の琵琶ヲならして 奥上るりと云もの越可多る 平家尓もあらす 舞尓もあらす ひなひ堂る調子打(張)上て 枕ち可う可しまし(やかまし)介れと さす可に邊国(片田舎)の遺風王春禮さるもの可ら 殊勝尓覚ら流
(五月雨の空聊(イササカ)はれて、夕月夜かすかに、籬が嶋も程ちかし。あまの小舟こぎつれて、肴(魚)わかつ(分ける)こゑゞゝに、綱手(引き網)かなしも(と)よみけむ歌のこゝろもしられて、いとゞ(いっそう)あはれ也。其夜目盲法師の琵琶をならして、奥上るりと云ものをかたる。平家にもあらず、舞にもあらず、ひなびたる調子打(張)上て、枕ちかうかしまし(やかまし)けれど、さすがに邊国(片田舎)の遺風わすれざるものから、殊勝に覚らる。)

【芭蕉尋ね地】
①千賀の浦(塩釜湾)・籬が嶋(曲木神社)
 塩釜市新町1-10-1付近





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