41.金沢

【芭蕉自筆影印】
①紀行文
 卯の花山 くり可ら可谷越こえて 金澤盤七月中の五日也 爰に大坂より可よふ商人何處と云ものあり それ可旅宿をとも尓す 一笑と云无の盤 此道尓す遣る名乃 本のゝゝ聞へて 世尓知人も侍し尓 去年の冬早世志多里とて 其兄追善(?)を催ス耳
(卯の花山、くりからが谷をこえて、金沢は七月中の五日也。爰に大坂よりかよふ商人何処と云ものあり。それが旅宿をともにす。一笑と云ものは、此道にすける名の、ほのゞゝ聞へて、世に知人も侍しに、去年の冬早世したりとて、其兄追善(?)を催すに)

 塚もうこ氣我泣声盤秋の風
(塚もうごけ我泣声は秋の風)
(塚も動け我泣声は秋の風 大垣記念館)

 ある草庵尓いさなは連て
(ある草庵にいざなはれて)

 秋すゝし手毎尓む氣や瓜天茄
(秋すずし手毎にむけや瓜天茄)

 途中唫
(途中吟)

 あ可ゝゝ登日盤難面も秋の風
(あかあかと日は難面も秋の風)

②「あかゝゝと」ほか句文懐紙
 め尓盤さや可尓登い飛氣舞秋立介しき 薄かる可や農葉末耳うこ支て 聊昨日尓替る空乃奈可免哀な梨介禮者

 あかゝゝ登日盤難面も秋の風

(めにはさやかにといひけむ秋立けしき、薄かるかやの葉末にうごきて、聊昨日に替る空のながめ哀なりければ

 あかゝゝと日は難面も秋の風 )

③「あかゝゝと」句文懐紙
 旅愁なく佐免兼て ものうき秋もやゝい多りぬ礼者 さす可にめ尓みえぬ風の音つれもいとゝ可那し介なる耳 残暑猶やま佐り介礼者

 あかゝゝ登日盤つ連なくも秋の風

(旅愁なぐさめ兼て、ものうき秋もやゝいたりぬれば、さすがにめにみえぬ風の音づれもいとゞかなしげなるに、残暑猶やまざりければ

 あかゝゝと日はつれなくも秋の風 )

④「つかもうごけ」発句詠草
 登し比我を待介る人のみま可利介るつ可尓まう(詣)て
 
 つ可もうこけ我泣聲ハ秋の風

(とし比我を待ける人のみまかりけるつかにまう(詣)で 

 つかもうごけ我泣声は秋の風 )


【句碑】
①蛤坂
 金沢市寺町5
 犀(さい)川大橋南詰 

 あ可ゝゝと日盤つ連奈く毛秋の風
(あかあかと日はつれなくも秋の風)

②成学寺
 金沢市野町1-1-18

 あ可ゝゝと日盤津連那くも秋能?
(あかゝゝと日はつれなくも秋の風)




③兼六園
 金沢市丸の内1-1
 公園内山崎山登口

 あ可ゝゝ登日盤難面も阿支能風
(あかあかと日は難面もあきの風)

④長久寺
 金沢市寺町5-2-20
 

 秋涼し手毎尓むけや瓜茄子
(秋涼し手毎にむけや瓜茄子)

⑤願念寺
 金沢市野町1-3-82

 つ可もうこけ我泣聲ハ秋の風
(つかもうごけ我泣声は秋の風)
「自筆『つかもうごけ』発句詠草を拡大」

⑥本龍寺
 金沢市金石西3-2-23

 小鯛さ寸柳春ゝしや海士可軒 ? 
(小鯛さす柳すずしや海士が軒 ?)



【難解文字(?)】

 其兄追善(?)

  参考文字
   善




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