48.敦賀

【芭蕉自筆影印】
①紀行文
 漸白根可嶽可く禮て 比那可嵩あら者る あさむ川の橋をわ堂里て 玉江の芦盤穂尓出介利 鶯能関を過て 湯尾峠を越連者火打可城 可へる山尓初鴈(?)を聞て 十四日能夕暮 つる可能津尓宿を无とむ
(漸白根が岳かくれて、比那が岳あらはる。あさむづの橋をわたりて、玉江の芦は穂に出けり。鶯の関を過て、湯尾峠を越れば火打が城、かへる山に初鴈(?)を聞て、十四日の夕暮、つるがの津に宿をもとむ。)

 其夜 月殊晴多利 あ春の夜もかくある遍き尓やといへ者 越路のならひ 明夜の陰晴者可利難し登 あるしに酒すゝめら禮て 希いの明神尓夜參ス 仲哀天皇能御廟也 社頭神さひて 松の木間に月能も里入堂る おまへの白砂霜を敷る可こ登し
(其夜、月殊晴たり。あすの夜もかくあるべきにやといへば、越路のならひ、明夜の陰晴はかり難しと、あるじに酒すゝめられて、けいの明神に夜参す。仲哀天皇の御廟也。社頭神さびて、松の木間に月のもり入たる、おまへの白砂霜を敷るがごとし。)

 徃昔 遊行二世能上人 大願發起能事あ里て みつ可ら葦を刈 圡石を荷 泥渟(デイテイ)を可ハ可せて 參詣徃来の煩なし 古例今尓多え須 神前耳真砂を荷ひ給(?)ふ これを遊行砂持と申侍る登 亭主能可多り遣る
(往昔、遊行二世の上人、大願発起の事ありて、みづから葦を刈、土石を荷、泥渟(デイテイ)をかはかせて、参詣往来の煩なし。古例今にたえず、神前に真砂を荷ひ給(?)ふ。これを遊行砂持と申侍ると、亭主のかたりける。)

 月清し遊行能もてる砂乃上
(月清し遊行のもてる砂の上)

 十五日 亭主能詞尓た可者す 雨降
(十五日、亭主の詞にたがはず、雨降。)

 名月や北国日和定なき
(名月や北国日和定なき)

②「なみだしくや」発句短冊

 なみ多しくや遊行のもてる砂能露
(なみだしくや遊行のもてる砂の露)

【句碑】
①気比神宮
 福井県敦賀市曙町11-68

 月清し遊行のもてる砂の上

②気比神宮

 なみ多しくや遊行のもてる砂能露
(なみだしくや遊行のもてる砂の露 初案 大垣記念館)
「自筆『なみだしくや』発句短冊を拡大」

③来迎寺
 敦賀市松島町2-5-32

 月清し遊行の持累砂の上


④常宮神社
 敦賀市常宮13-11

 月清し遊行能毛天留(?)砂の上

⑤気比神宮

 名月や北国日和定なき

【芭蕉像】
①気比神宮


【難解文字(?)】
 山尓初鴈(?)を
 
  参考文字
   文面前後から鴈を仮表記




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