47.福井

[8月11日(9月24日)〜]
    福井・等哉宅(2泊)

【芭蕉自筆影印】
 福井ハ三里計な禮者 夕飯志多堂めて出るに 堂そ可禮の道堂登ゝゝし 爰耳等裁と云古き隠子(インジ)有 いつ連の年尓や 江戸耳来りて予を尋 遥十とせ餘り也 い可尓老さら本ひて有尓や 将(ハタ)死遣る尓や登 人尓尋侍連者 いま多存命志て そこゝゝ登 をしゆ
(福井は三里計なれば、夕飯したためて出るに、たそかれの道たどゝゞし。爰に等裁と云古き隠子(インジ)有。いづれの年にや、江戸に来りて予を尋。遥十とせ余り也。いかに老さらぼひて有にや、将(ハタ)死けるにやと、人に尋侍れば、いまだ存命して、そこゝゝと、おしゆ。)

 市中ひそ可に引入て あやしの小家尓夕顔 遍ちま能者可ゝ利 鶏頭 者ゝ木ゝ尓戸本そ越可く春 扨(サテ)盤此うちにこ楚登門を叩者 侘し氣な流女能出て いつくよ利王多利給(?)ふ道心能御坊尓や あるし盤 このあ多利何某と云ものゝ方尓行ぬ もし用あら者 尋多万(?)へ登云
(市中ひそかに引入て、あやしの小家に夕顔、へちまのはかゝり、鶏頭、はゝ木ゝに戸ぼそをかくす。扨(サテ)は此うちにこそと門を叩ば、侘しげなる女の出て、いづくよりわたり給(?)ふ道心の御坊にや、あるじは、このあたり何某と云ものゝ方に行ぬ、もし用あらば、尋たま(?)へと云。)

 可禮か妻なるへしと志らる む可し物可多利尓こ楚可ゝる風情ハ侍連と や可て尋あひて 其家尓二夜とま里て 名月盤つる可能湊尓と旅立 等裁も共尓送らんと 裾お可しうから希て 道の枝折と う可礼立
(かれが妻なるべしとしらる。むかし物がたりにこそかゝる風情は侍れと、やがて尋あひて、其家に二夜とまりて、名月はつるがの湊にと旅立。等裁も共に送らんと、裾おかしうからげて、道の枝折と、うかれ立。)




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46.汐越の松・天竜寺

[8月8日(9月21日)〜]
    (泊)不明

【芭蕉自筆影印】
 越前の境 吉崎の入江を舟耳棹指て 汐越の松を尋
 終夜嵐尓波を者こ者せて
 月を多れ堂る汐越の松 西行
この一首尓て数景盡多利 若一辨を加ル无の盤 無用の指を立る可こ登し 丸岡天龍寺の長老 古き因あれ者 尋ぬ 又金沢の北枝と云もの 可りそめ尓見送りて 此處まて志多ひ来ル 所々の風景過さすお无ひつゝ氣て 折節あ者連なる作意なと聞ゆ 今既別耳望みて
(越前の境、吉崎の入江を舟に棹指て、汐越の松を尋。
 終夜嵐に波をはこばせて
 月をたれたる汐越の松 西行
この一首にて数景尽たり。若一弁を加るものは、無用の指を立るがごとし。丸岡天龍寺の長老、古き因あれば、尋ぬ。又金沢の北枝と云もの、かりそめに見送りて、此処までしたひ来る。所々の風景過さずおもひつゞけて、折節あはれなる作意など聞ゆ。今既別に望みて、)

 物書て扇引割名残哉
(物書て扇引割名残哉)

 五十丁山耳入て 永平寺越礼ス 道元禅師の御寺也 邦機千里を避(?)て 可ゝる山陰耳跡を残し多万(?)ふも 貴き故有と可や
(五十丁山に入て、永平寺を礼す。道元禅師の御寺也。邦機千里を避(?)て、かゝる山陰に跡を残したま(?)ふも、貴き故有とかや。) 
 
【句碑】
①天龍寺

 物書て扇引さく餘波哉
(物書て扇引さく余波哉)


【芭蕉像】
①天龍寺


【難解文字(?)】
 邦機千里を避(?)て

 参考文字
  各種調査・探求も見つからず
  避を仮表記
  




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45.全昌寺

[8月7日(9月20日)]
    小松〜全昌寺(泊)

【芭蕉自筆影印】
 大聖持の城外全昌寺登云寺に泊る 猶可ゝの地也(?) 曽良も前の夜此寺に泊りて
 終夜秋風聞やうらの山
と残ス 一夜の隔 千里にお那し 我も秋風を聴て衆寮耳臥 明本のゝ空ち可ふ 讀經聞ユル二 板鐘(ハンショウ)鳴て食堂耳入 氣ふ盤越前の国へ登 心早卒尓して堂下尓下ル 若き僧共 紙 硯を可ゝへて 階(キザハシ)の无とまて追来ル 折節庭中の柳散連者
(大聖持の城外全昌寺と云寺に泊る。猶かゞの地也(?)。曽良も前の夜此寺に泊りて、
 終夜秋風聞やうらの山
と残す。一夜の隔、千里におなじ。我も秋風を聴て衆寮に臥。明ぼのゝ空ちかふ、読経聞ゆるに、板鐘(ハンショウ)鳴て食堂に入。けふは越前の国へと、心早卒にして堂下に下る。若き僧共、紙、硯をかゝへて、階(キザハシ)のもとまで追来る。折節庭中の柳散れば、)

 庭掃て出者や寺に散柳
(庭掃て出ばや寺に散柳)

 とりあへぬ一句 草鞋な可ら書捨ツ
(とりあへぬ一句、草鞋ながら書捨つ)

【句碑】
①全昌寺

 庭掃て出者や寺に散柳
(庭掃て出ばや寺に散柳)
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43.山中温泉

[7月27日(9月10日)〜]
    山中温泉・和泉屋久米之助(8泊)
    医王寺〜道明が淵〜黒谷〜・・

【芭蕉自筆影印】
①紀行文
 温泉耳浴春其功有間耳次と云
(温泉に浴す。其功有間に次と云。)

 山中や菊盤たをらぬ湯の匂
(山中や菊はたをらぬ湯の匂)

 あるし登春るもの盤 久米之助とて いま多小童也 可禮閑父俳諧を好て 洛の貞室若輩のむ可し 爰に来りし比 風雅尓辱(ハヅカシメ)ら禮て 洛に帰りて 貞徳の門人とな川て世に志ら流 功名の後 此一村判詞の料を請春と云 今更む可し物可多りとハ成ぬ 曽良ハ腹を病て 伊勢の国長嶋と云處尓ゆ可利あ連者 先立て旅立行尓
 ゆきゝゝて堂ふ禮伏共萩の原 曾良
と書置多り 行ものゝ悲しミ 残るものゝうらみ 隻鴨のわ可禮て 雲耳まよふ可ことし 予も又
(あるじとするものは、久米之助とて、いまだ小童也。かれが父俳諧を好て、洛の貞室若輩のむかし、爰に来りし比、風雅に辱(ハヅカシメ)られて、洛に帰りて、貞徳の門人となつて世にしらる。功名の後、比一村判詞の料を請ずと云。今更むかし物がたりとは成ぬ。曽良は腹を病て、伊勢の国長嶋と云処にゆかりあれば、先立て旅立行に、
 ゆきゝゝてたふれ伏とも萩の原 曾良
と書置たり。行ものゝ悲しミ、残るものゝうらみ、隻鴨のわかれて、雲にまよふかことし。予も又、)

 遣ふよりや書付消さん笠の露
(けふよりや書付消さん笠の露)

②「やまなかや」句文懐紙
 北海能磯つ多ひ志て 加州やまな可能涌湯耳浴ス 里人の曰 このとこ路盤 扶桑三能名湯能其一な利と 万ことに浴す流事志者ゝゝなれ者 皮肉うるほひ 筋骨尓通梨て 心神ゆる九 遍(ヒトヘ)尓顔色越とゝむる古ゝちす 彼桃原も舟越うしなひ 慈童可菊能枝折もしらす

 やまな可や菊盤多おらしゆのに本ひ

(北海の磯づたひして、加州やまなかの涌湯に浴す。里人の曰、このところは、扶桑三の名湯の其一なりと。まことに浴する事しばゝゝなれば、皮肉うるほひ、筋骨に通りて、心神ゆるく、遍(ヒトヘ)に顔色をとゞむるこゝちす。彼桃源も舟をうしなひ、慈童が菊の枝折もしらず

 やまなかや菊はたおらじゆのにほひ)


【句碑】
①国分医王寺
 石川県加賀市山中温泉薬師町リ1の1

 山中や菊者手折らし湯能匂ひ
(山中や菊は手折らじ湯の匂ひ)

②大木戸門跡
 山中温泉マップ参照

 や万な可や菊盤多おらしゆのに本飛
(やまなかや菊はたおらじゆのにほひ 初案 大垣記念館)


③道明地蔵の右側
 山中温泉マップ参照

 や万那可や支具盤太於らしゆ能尓ほ飛
(やまなかやきくはたおらじゆのにほひ)

④大木戸門跡
 山中温泉マップ参照

 漁り火尓河鹿や波の下むせび
(漁り火に河鹿や浪の下むせび)
(いさり火にかじかや波の下むせび 大垣記念館)

⑤鶴仙渓こおろぎ橋・岩不動お堂の先
 山中温泉マップ参照

 かゝり火に河鹿や波の下むせび
(かゞり火に河鹿や波の下むせび)

⑥泉屋跡

 今日よりや書付消さん笠の露 大垣記念館


④和泉屋跡 菊の湯南左前角
 山中温泉マップ参照

 湯の名残今宵ハ肌の寒可らむ
(湯の名残今宵は肌の寒からむ 大垣記念館)




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44.那谷寺

[8月5日(9月18日)]
    那谷寺〜小松に戻り 

【芭蕉自筆影印】
 山中の温泉尓行本登 白根可嶽跡に見なしてあゆむ 左りの山際尓観音堂有 花山の法皇三十三所の順礼とけさせ多万(?)ひて後 大慈大悲乃像を安置志給(?)ひて 那谷と名付たま(?)ふと也 那智 谷組の二字を王可ち侍しと楚 奇-石さまゝゝ尓 古-松植ならへて 萱ふきの小堂 岩の上耳造り可氣て 殊勝の圡地也
(山中の温泉に行ほど、白根が岳跡に見なしてあゆむ。左りの山際に観音堂有。花山の法皇三十三所の順礼とげさせたま(?)ひて後、大慈大悲の像を安置し給(?)ひて、那谷と名付たま(?)ふと也。那智、谷組の二字をわかち侍しとぞ。奇-石さまゞゝに、古-松植ならべて、萱ぶきの小堂、岩の上に造りかけて、殊勝の土地也。)

 石山の石よ利白し秋の風
(石山の石より白し秋の風)

【句碑】
①那谷寺
 石川県小松市那谷町ユ122

 石山能石よ里白し秋の風 白:衡山
(石山の石より白し秋の風)


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42.小松

[7月24日(9月7日)]
    野々市〜小松・近江屋(泊)
[7月25日(9月8日)]
    建聖寺〜本折日吉神社神主宅(泊)
[7月26日(9月9日)]
   十一吟・歓水亭〜 近江屋(泊)
[7月27日(9月10日)]
   諏訪宮祭礼〜多太八幡〜山中
[8月5日(9月18日)]
   那谷寺から戻り(泊)
[8月6日(9月19日)]
    三吟歌仙〜(泊)
   
【芭蕉自筆影印】
①紀行文
 小松登云處尓て
(小松と云処にて)

 志本らしき名や小松吹萩薄
(しほらしき名や小松吹萩薄)

 此所太田の神社耳詣 斎(?)藤別當眞盛可甲 錦の切あり 其昔源氏尓属せし時 義朝公より(?)多万(?)ハらせ多万(?)ふ登可や 氣尓も平士の无のにあらす 目庇(マビサシ)より(?)吹返しまて 菊可ら艸の本りもの金をちり者め 龍頭耳鍬形打堂利 真盛討死の後 木曽義仲願状尓そへて 此社耳こめら禮侍るよし 樋口の次郎可使せし事共 まのあ多り縁記(?)尓見え多利
(此所太田の神社に詣。斎(?)藤別当直盛が甲、錦の切あり。其昔源氏に属せし時、義朝公より(?)たま(?)はらせたま(?)ふとかや。げにも平士のものにあらず。目庇(マビサシ)より(?)吹返しまで、菊から艸のほりもの金をちりばめ、龍頭に鍬形打たり。真盛討死の後、木曽義仲願状にそへて、此社にこめられ侍るよし、樋口の次郎が使せし事共、まのあたり縁起(?)に見えたり。)

 むさ無やな甲の下のきりゞゝ春
(むさむやな甲の下のきりぎりす)

②「わせのかや」等三句懐紙

 志本らしき名や小松婦く萩薄

 ぬ礼て行や人も於可しきあ免の萩

【句碑】
①建聖寺
 小松市寺町94

 志ほらしき名や小松ふ久萩すゝき

②本折日吉神社
 小松市本折町1

 志於らしき名や小松吹く萩薄

③莵橋(うはし)神社
 小松市浜田町イ233

 志をらしき名や小松ふく萩薄

④多太神社
 小松市本折町72 鳥居・参道右

 むざんやな甲能し多のきりぎりす
(むざんやな甲のしたのきりぎりす)

⑤多太神社 

 あなむさん甲の下能き里ゝゝ春
(あなむざん甲の下のきりぎりす 初案 大垣記念館)


【芭蕉像】
①多太神社

②建聖寺




【難解文字(?)】
 社耳詣斎(?)藤
(社に詣斎(?)藤)

 参考文字
  斎







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41.金沢

[7月15日(8月29日)]
    埴生八幡〜源氏山〜金沢・京屋吉兵衛(泊)
[7月16日(8月30日)〜]
    金沢・宮竹屋喜左衛門(8泊)

【芭蕉自筆影印】
①紀行文
 卯の花山 くり可ら可谷越こえて 金澤盤七月中の五日也 爰に大坂より可よふ商人何處と云ものあり それ可旅宿をとも尓す 一笑と云无の盤 此道尓す遣る名乃 本のゝゝ聞へて 世尓知人も侍し尓 去年の冬早世志多里とて 其兄追善(?)を催ス耳
(卯の花山、くりからが谷をこえて、金沢は七月中の五日也。爰に大坂よりかよふ商人何処と云ものあり。それが旅宿をともにす。一笑と云ものは、此道にすける名の、ほのゞゝ聞へて、世に知人も侍しに、去年の冬早世したりとて、其兄追善(?)を催すに)

 塚もうこ氣我泣声盤秋の風
(塚もうごけ我泣声は秋の風)
(塚も動け我泣声は秋の風 大垣記念館)

 ある草庵尓いさなは連て
(ある草庵にいざなはれて)

 秋すゝし手毎尓む氣や瓜天茄
(秋すずし手毎にむけや瓜天茄)

 途中唫
(途中吟)

 あ可ゝゝ登日盤難面も秋の風
(あかあかと日は難面も秋の風)

②「あかゝゝと」ほか句文懐紙
 め尓盤さや可尓登い飛氣舞秋立介しき 薄かる可や農葉末耳うこ支て 聊昨日尓替る空乃奈可免哀な梨介禮者

 あかゝゝ登日盤難面も秋の風

(めにはさやかにといひけむ秋立けしき、薄かるかやの葉末にうごきて、聊昨日に替る空のながめ哀なりければ

 あかゝゝと日は難面も秋の風 )

③「あかゝゝと」句文懐紙
 旅愁なく佐免兼て ものうき秋もやゝい多りぬ礼者 さす可にめ尓みえぬ風の音つれもいとゝ可那し介なる耳 残暑猶やま佐り介礼者

 あかゝゝ登日盤つ連なくも秋の風

(旅愁なぐさめ兼て、ものうき秋もやゝいたりぬれば、さすがにめにみえぬ風の音づれもいとゞかなしげなるに、残暑猶やまざりければ

 あかゝゝと日はつれなくも秋の風 )

④「つかもうごけ」発句詠草
 登し比我を待介る人のみま可利介るつ可尓まう(詣)て
 
 つ可もうこけ我泣聲ハ秋の風

(とし比我を待ける人のみまかりけるつかにまう(詣)で 

 つかもうごけ我泣声は秋の風 )

【句碑】
①蛤坂
 金沢市寺町5
 犀(さい)川大橋南詰 



 あ可ゝゝと日盤つ連奈く毛秋の風
(あかあかと日はつれなくも秋の風)


②成学寺
 金沢市野町1-1-18


 
    あ可ゝゝと日盤津連那くも秋能?
(あかゝゝと日はつれなくも秋の風)






③兼六園
 金沢市丸の内1-1
 公園内山崎山登口



 あ可ゝゝ登日盤難面も阿支能風
(あかあかと日は難面もあきの風)


④長久寺
 金沢市寺町5-2-20
 



 秋涼し手毎尓むけや瓜茄子
(秋涼し手毎にむけや瓜茄子)



⑤願念寺
 金沢市野町1-3-82



 つ可もうこけ我泣聲ハ秋の風
(つかもうごけ我泣声は秋の風)
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⑥本龍寺
 金沢市金石西3-2-23

 小鯛さ寸柳春ゝしや海士可軒 ? 
(小鯛さす柳すずしや海士が軒 ?)




【難解文字(?)】

 其兄追善(?)

  参考文字
   善